サファイヤのリング選びで失敗しないために宝石鑑定士が購入前にチェックしているポイント5選
サファイヤのリング選びで失敗しないために宝石鑑定士の私がお客様に接客する際にチェックしているポイントを5つ解説します。
この記事を読むことでサファイヤリングの選び方がわかり、店員のアドバイスだけでなく自信を持って楽しみながら購入できるようになります。
チェックポイント①産地、色、透明度、値段の総合点
サファイヤの産地は主にスリランカ、タイ、インドです。生産地によって特徴があるとは言われますが、自然の産物なので、どの産地がベストとは言い切れません。
採掘量の一番多いスリランカでもグレードの高いものと低いものすべてがあるからです。
サファイヤは色の範囲がとても広いです。青を表現するにも細かく分けると下記のように言うことがあります。
- 赤みががった青
- グレイがかった青
- 青紫っぽい青
- 真っ青
また石によっては色にムラがある場合があるので、均等に色がのっているか?もみます。
これに加え、透明度もみます。きれいな青でも透明度が低いと濁ったように見えるからです。サファイヤは弱い光の元では黒っぽく見え、強い光の元では青っぽく見えます。両方の光の元で見るのがベストです。
上記のことをまとめると、下記のようなチャートで品質を客観的に見ることができ、プロは頭の中にあるチャートを元に取引をします。(写真元:宝石 諏訪恭一著 世界文化社)
一般的なジュエリー店で購入する場合は赤の四角で囲った品質のものがいいです。一般の方が見るときは、店頭でできるだけたくさんのサファイヤリングをみせてもらうといいです。「色と透明度と両方の目で見る」と意識するだけで石の見え方が違ってきます。
値段もほぼチャートの通りに反映されます。
ケーススタディ1:Aクラス同士の比較ではどこを見るか?
スリランカ産のサファイヤの比較は何処で見るか?を説明します。
①の石は青色が濃く最高級の色です。透明感も高く値段もかなり高いです。
②は①に比べると少しだけ青色が薄く点数が低くなります。値段差は2割程度低くなります。
ランクが高いサファイヤは予算が許せば最高級の色の①の購入をおススメします。ここまできれいな色はなかなか無く資産性が高いので、十分に楽しんだあと再販できる可能性があるからです。
ケーススタディ2:AランクとBランクの比較はどこを見るか?
AランクとBランクの比較をします。
②は④と比べると青の色が綺麗です。
④は青色がもう少し濃いとAランクに入れそうな石です。
この場合、値段差は25%くらいなので、予算に応じて購入します。再販は難しいので楽しむためのものとしてリングのデザインと合わせて決定します。どちらをとっても自分の手元にくると好きになるのがサファイヤの魅力の1つです。
チェックポイント②石が加熱処理されているか非加熱処理なのか
サファイヤは熱を加えると発色がよくなるため、現在市場に出回っているサファイヤはほとんどのものが加熱処理をされています。
私の私見としては、もしも将来的に加熱処理が劣化し、発色が変わってしまうならやっていけない処理だと思いますが、半永久的に変わらないのであれば色のきれいさを引き出すという意味ではありだと思います。
また、粗悪なサファイヤは加熱をしても綺麗に発色はしません。もともとのクオリティがいいからこそ加熱処理が活きてきます。
もしも、非加熱のもので最高にきれいな色のものがあればそれに越したことはありませんが、市場でもたまに見かけるくらいです。発色がキレイであれば、けた違いに値段も上がります。
オークションレベル(数億円)になって初めて加熱か非加熱かを問えばよくて、一般の方が購入する際には加熱できれいなものを探すといいでしょう。
加熱か非加熱かは良質なお店では鑑別書を発行してくれるので、そこに明記されています。
チェックポイント③形と大きさ
サファイヤやルビーなどの色石は原石の色の入り方をみて、どのようにカットしたらいいかを見極めます。色が均一になることがきれいに見えるための最も大切なことなので、カットが難しい石です。
一般的に楕円形や丸にカットされます。また横からみた形も確認するといいです。高さが浅いもの厚みがあるものと幅があります。
どちらがいいというよりも、真上からみて色の乗り具合と透明度が活かされていればOKです。
チャートの7は細長い楕円と表現され、5は丸に近い楕円と表現されます。どの形であれ、サファイヤリングを加工するときは形の良さが活かされるデザインにすることが多いです。
大きさはキャラット(CT)で表します。大きさというより重さです。たとえば、横からみて厚みがあまりないものは、真上からみて大きく感じます。逆に、横から見て厚みがあるものは真上からみると小さく感じます。
同じようなグレードの場合、大きい方が値段は高くなります。
リングにセットされると形は評価の基準からははずれるので、購入するときはリングのデザインと合わせて好きなものを購入します。
チェックポイント④石の留め方とデザイン
サファイヤは石の形によってデザインが決まります。石の持つ一番いい面を活かされているかをチェックします。
デザインに関しては多種多様で、個人の好みを最優先することをおススメします。個人的におススメの石の留め方とデザインを表にまとめます。
石の形 | 好ましい石の留め方とデザイン |
楕円形(オーバル) | 綺麗な形であれば爪どめ。デザインはあらゆるデザインに対応 |
丸に近い楕円 | 形に少し問題がある場合は覆輪止め。ダイヤを周りにあしらってバランスをとる |
四角 | 爪止め、覆輪止め両方。形が珍しいのでダイヤは華美になりすぎないように。 |
チェックポイント⑤鑑別書のグレード
プロはどこの鑑別書がついているか?をチェックします。
鑑別書とは石のグレードを表記するものではなく「この石はサファイヤに間違いありません。にせものではありません。」を意味するものです。
一般的に高額品につけるもので、カジュアルなサファイヤリングにはつきません。高額品には産地まで記名してあることが多いです。それほど流通に責任を持った逸品であるといえます。
また、鑑別書にもグレードがあり、世界的な信用を得ているのはGIAという鑑定機関が発行したものです。日本の御徒町にもいくつか鑑定機関があります。鑑定機関をA鑑・B鑑・C鑑という3つのランクがあり、最もグレードが高いのはA鑑です。
日本で取得できるA鑑のリストです。この3つのどれかであれば信用が高いです。
鑑定機関名 | 公式サイト |
GIA JAPAN | https://www.gia.edu/JP |
CGL(中央宝石研究所) | https://www.cgl.co.jp/ |
AGT(AGTジェムラボラトー) | http://www.agt.jp/ |
写真は例としてエメラルドの鑑別書になります。記載されているのは、大きさ、色、原産地、加熱の有無です。GIAの鑑別書がついている時点でかなり信用できる石と判定します。
実際のお客様がサファイヤのリングを選んで購入するまでの実例
実際に私がサファイヤリングの接客した実例を紹介します。2024年3月14日に表参道のジュエリーショップで実施しました。
お客様は人事コンサルタントの会社を経営されている50歳の女性です。ジュエリーは大好きでダイヤモンドリング、パールリングなどいくつもお持ちです。ジュエリーをみる目ができているので納得するサファイヤリングを揃えました。
個性の違うものを揃える
今回用意したのは5点。サファイヤの個性が違うものを揃えました。目の肥えた方には全く違うタイプの石をみせることで、サファイヤの色の幅を掴んでいただけて、好きな色の傾向がつかみやすいからです。
今回は全部で5点。向かって右から
- 横長の四角のサファイヤ
- エメラルドカットのサファイヤ
- オーバルカットのサファイヤ
- 丸みのあるオーバルカットのサファイヤ
- スクウエアカットのサファイア
まわりにあしらわれているダイヤやデザインも全く違うものを揃えました。
お客様に全体像を見てもらう
お客様に全体像をみていただきます。
ジュエリーやアクセサリーを購入するときの第一印象はとても大事です。女性はだれもが直感的に「これが好き!」という感覚があり、最終的な決断をするときの決め手になるので、どこに目が留まるか?をしっかりと観察します。
お客様との会話はこのような感じでした。
うわー。サファイヤってやっぱりきれいですね!
T様の雰囲気に合わせてお好きそうなのを揃えてみました。
どれも素敵!選ぶのに時間がかかりそう。
はい。ゆっくり見ていきましょう。第一印象で気になるものありますか?
色の一番濃いこれかな?(エメラルドカットのサファイヤ)
さすが!お目が高いですね。
Tさんは一番グレードの高いサファイヤがお好みのようでした。ジュエリーをたくさん見ている人、持っている人は一番いいものに目が留まります。いわゆる目が肥えているのです。
1点ずつ試着をする
1点ずつサファイヤリングを試着します。
スクウエアカットのサファイアリングを試着
スクエアカットのサファイヤリングをつけてみます。サファイヤの周りに四角のダイヤがあしらってある上品なデザインです。
手にはめると印象変わりますね。色は少し薄めだけど馴染みますね。
実施に指にはめると印象が変わりますよね。デザインはどうですか?
定番!って感じで上品だけど、リングの幅が広いからまとまりすぎない感じがいいですね。
かっこよく着けたいときに合いそうですね。
サファイヤの色はその時の手の血色とか光の加減によって若干変わって見えます。他のものと比べながら好きな色が分かってくるので、今の印象はそのままで、あまり深く考えず次にいきます。
丸みのあるオーバルカットのサファイヤリングを試着
丸みのあるオーバルカットのサファイヤを試着します。
これは私の指には少し細いかしら?
十分に迫力のあるリングですが、Tさんはたくさんお持ちなので物足りなく感じるかもしれないですね。ただ、他のリングを合わせてつけるとイメージされると違った印象になりますよ。
なるほど!これと重ねられるダイヤのリングとかいいですね!
サファイヤのリングはダイヤや地金のリングと重ねてつけることができるので、単体の印象だけでなく、お手持ちものもと合わせて着けるイメージを提案しました。
オーバルカットのサファイヤリングを試着
オーバルカットのサファイヤリングを試着します。先ほどの丸みのあるサファイヤよりも若干縦長の石です。
これは近所にお出かけにでるときにさらっとつけたい気軽な感じね。
石はとてもクリアな青色ですが、リングそのもののデザインがカジュアルですよね。これだと左右両方の指にカジュアルなリングをするとバランスが良さそうですね。
両手に着けてじゃらじゃらした感じにならないですか?
ハイジュエリーでなければじゃらじゃらした感じに見るかもしれませんが、やはり高級品は存在感が違いますからね。
左右に違ったリングをはめることいずれチャレンジしてみたいです。
エメラルドカットのサファイヤリングを試着
エメラルドカットのサファイヤリングを試着します。
このサファイヤリングは手がきれいに見えますね!
サファイヤの存在感を活かすデザインですね。とてもお似合いです。サファイヤが四角にカットされるのは珍しいですね。元々の原石が個性的だったと思われます。
石は青色が薄い気がします。
透明感が高いので光の種類によってはそう見えます。どちらかというと気軽に着けたいタイプの石ですね。
横長の四角のサファイヤリングを試着
横長の四角のカットのサファイヤリングを試着します。
これはまたあまり見ないデザインですね。
先ほどのエメラルドカットのサファイヤリングも珍しかったですが、さらに個性的ですね。サファイヤはオーバルにカットするのが一般的なのですが、違和感はありますか?
いいえ。逆に挑戦してみたいです。
ここでTさんが気にいった2点に絞っていきます。
2点を比較する
Tさんは縦長、横長の四角カットのサファイヤリングが最終候補になりました。
どちらがいいかしら。悩みます。
どちらも素晴らしいリングなので、悩ましいですね。Tさんの表所を見ていると石のきれいな方に心惹かれている気がします。
そうなんです。デザインはどちらも申し分ないので。やはり縦長の方にします。色のノリがやはり好きです。
最終的には好みになるので、Tさんの判断にお任せしました。どのポイントで悩んでいるかをさりげなくお伝えすることで、何をもって決定するかが明確になります。
どのリングにするか決めるとき宝石鑑定士として考えたこと
Tさんは企業相手のお仕事をされているので、打ち合わせなどにもジュエリーをつけることがあります。
また、お付き合いも広いので多くの人が集まる場所に出かけることもあるので、仕事とプライべートとの両方の場面で使えるものをと思いました。
最終的に選んだリングは深いブルーでかつ透明感があるので、光の加減によって変わった表情をみせてくれます。
昼間の仕事のときは控えめに、夜の集まりには大胆に活躍してくれそうです。
サファイヤのグレードはトップクラスものですが、それに負けない気品をお持ちだからこそ着けこなせるサファイヤリングでした。
サファイヤやルビーなどの色石と言われるリングを選ぶときは、まずは第一印象を大切にしながら見比べ、最後はTPOを考えて選ぶといいです。
最後に
サファイヤリングを選ぶときは
- 原産地は参考程度に
- 色と透明感
- 形と大きさ
- 石の留め方とデザイン
- GIAの鑑別書がついているかどうか
- お値段
で総合的に判断します。
プレゼント選びはこちらの記事も参考にしてください。
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